巻頭言:東日本大震災から半年
【木材保存2011.9】

3月の東日本大震災発生からかなり経過した。しかし、事後の復旧・復興には未だに展望が見えてきていないところが多い。それは、この震災被害がこれまで経験したことのないほど広範囲に亘っているとともに、「津波」といわば2次災害でもある「原発・放射線汚染」の二つの外的要因が複雑に絡んでいるためである。とくに後者の問題は、今後、さまざまな形でかなり長い間、影響を及ぼし続けることは明らかである。

木造の家屋・構造物の被害については、被災住宅数は全半壊併せて25万棟といわれているが、その大部分は津波によるものである。地震動そのものによる被害は比較的少なく、これはいわば「想定内」だったように思われるものの、今後、津波に対する木造を含む各種構造物の抵抗性についての議論を経たうえで、被災跡地の土地利用・地域計画に対するグランドデザインが出てくるだろう。

このような中で「木材」を生業とする業界・研究者には何が求められてくるであろうか?

緊急性を要する木材利用関連の課題には、仮設住宅問題、合板等木材生産工場に及ぼした直接的被害の復旧、それに瓦礫処理対策がある。また、やや風評に近いかもしれないが、放射線の影響による木材・木質材料の汚染に対する対応も早急に求められている。筆者は、この中では瓦礫処理が最も深刻な課題と考えている。

阪神・淡路大震災のときの瓦礫発生量は1,400万トン、うち不燃物約1,200万トンの半分は埋め立てされ、その上に神戸空港ができた。これに対し今回の発生量は推定2,500万トン。その大部分はおそらく「一般廃棄物」、しかし「産業廃棄物」やさらに地域によっては「廃棄物」の定義から外れる「放射性廃棄物」の混入の可能性も否定できない。うち木材は重量比では20%であるが、体積比では50%を超える。全体では1,000万m3。確かに被災地の瓦礫集積場では建築用木材が目立つ。

さてこの木材をどうするか、である。一般論で言えば、瓦礫から何らかの方法で木材を分別し、さらに燃焼等、次のステージにおいても、有害物質の発生など、安全性のチェックを受け、そのレベルによって再分別が行う必要がある。津波被害材以外についてはこのように分別され、すでにエネルギー源として利用されている例もあると聞く。しかし、津波被害材ではそうはいかず、現状ではマテリアル利用はおろか、エネルギー源としての利用すら難しい、とのことだ。それに「どこで」「誰が」分けるのか、となると、かなり超法規的な運用が許されない限り、動きようがないのではないか、とも思える。

地震発生直後、A先生は「問題は瓦礫処理だろうな」とおっしゃっていた。まさに慧眼である。その後、岩手大関野先生や本研究所所員などが視察状況を発信し、木材学会で情報交換のためのメーリングリストが創られた(現在休止中)。東北では土木学会がコアとなって「瓦礫処理検討部会」を設置し、活動を続けているが、そこに本研究所から所員を派遣することにした。

筆者は最近の中央発信情報には疎くなっているので、木質瓦礫対策についての動きを十分に察知してはいない状態にあるが、やはり「木材」を生業とする業界・研究者として、何か発信する「責任」があるように考える。

 

 

 

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